建設業許可について
2009年12月
行政書士 安野光宣
はじめに
私は現在、行政書士として業務をしておりますが、2年前の商工会議所主催の創業塾で矢口支部長と知り合い、その縁で現在建設業研究会にオブザーバーとして参加させていただいております。参加させていただくようになってから約1年になりますが、毎回診断士の先生方の知識や業務に対する意識の高さに勉強させていただいております。
行政書士業務
行政書士は官公署に提出する書類の作成、提出を主業務として行っている方が多く(最近では相続、契約書作成、内容証明の作成などを中心に業務をしている方も増えてきています)特に建設業関係の書類作成に関しては昔から多くの行政書士が関わっている仕事であります。
私も建設業書類作成をメインにやっている一人であり、今回建設業許可についての基礎的な知識を発表させていただきました。
建設業許可とは
建設業を営むには原則許可が必要になります。建設業とは元請、下請を問わず建設工事の完成を請け負うことをいい、軽微な工事のみを請け負う場合を除き、営業を開始する前に建設業法による許可を受けなければなりません。
許可を受けなくても営業できる軽微な工事は建築一式工事では@工事1件の請負代金の額が1,500万円未満の工事(消費税相当額を含む)A請負代金の額にかかわらず、木造住宅(主要構造部が木造であり、主目的が居住の用に供するもの。店舗併用住宅の場合は延面積のうち1/2以上を居住の用に供するもの)で延面積150平方メートル未満の工事をさし、建築一式工事以外の工事では工事1件の請負代金の額が500万円未満の工事(消費税相当額を含む)とされており請負代金には発注者から支給された材料費も含めることとなっている。
軽微な工事のみを請け負うことを想定すれば、許可を受けなくても業務はできますが、請負代金等の制約が出てくることから、建設業を営む事業者は許可を得ることが望ましく、また昨今では法令順守の観点から大手業者からの案件では許可を持っている業者を選定する流れになっております。
許可取得のポイント
許可取得のポイントについて簡単ではあるが、下記の順番で説明したい。
1、許可行政庁と許可区分
2、業種の種類
3、許可基準
1、許可行政庁と許可区分
まずは、建設業の許可の申請先ですが、それぞれの事業者の営業所在地によって異なります。営業所が単一の県内にある場合は、その所在する県庁に提出し、複数県にまたがる場合は主たる営業所が存する県を経由し国土交通大臣に申請することになります(いわゆる大臣許可です)この営業所という概念も建設業特有のものがあり、複数県にまたがるような場合は行政書士等の専門家に相談することをお勧めしたい。
次に許可区分についてですが、許可区分は特定建設業と一般建設業とに分かれており。それぞれ下請契約可能な金額によって分かれており元請工事のうち3,000万円以上を下請へ発注(建築工事は4,500万円以上)するには一般建設業の許可ではなく特定建設業の許可が必要になります。特定建設業許可はより大規模な工事を請け負う業者を想定しており、許可を受けるには一般建設業より許可の基準が厳しくなります。一般建設業許可を申請する建設業者が多いのが現状です。
2、業種の種類
建設業法では28種類の工事種類に分類され、2種類の一式工事と26種類の専門工事に分かれております。許可を申請する場合には業種ごとに許可を受けるためどの業種を選択し申請するかは極めて重要である。
特に建設業者の依頼では一式工事を希望する方が多くオールマイティーな業種だと思われているようですが、決してそうではありませんので、現在やっている業種、将来やりたい業種を正確に判断し、そして希望業種が許可をうけられるのかを含め詳しく検討をする必要があります。
3、許可基準について
つぎに許可の基準ですが、次の4つの基準を全て満たしていることが必要になります。
(1) 経営業務の管理責任者がいること
(2) 専任技術者がいること
(3) 請負契約に関して誠実性があること
(4) 財産的基礎又は金銭的信用
(1)経営業務管理責任者
建設業許可を得るためには、法人の場合は常勤の役員、個人の場合は本人又は支配人のうち1名が経営管理責任者に就任しなければなりません。経営管理責任者の要件は許可を受けようとする業種に関して5年以上、許可を受けようとする業種以外の建設業に関しては7年以上建設業においての経営責任者としての経験があることが求められます。経営経験とは建設業において法人の役員、建設業法上の支店長・営業所長、事業主又は支配人としての経験をいいます(経営業務に準ずる場合、補佐経験の場合、執行役員の場合等レアなケースもありますが、紙面の関係上割愛させていただきます)。そして、これらの実績を商業登記事項証明書や決算書等により証明できなければなりません。
許可取得を希望される事業者のなかでは該当する人材がいない場合もあり、注意が必要です。
(2)専任技術者
許可を受けて建設業を営もうとする営業所ごとに、各業種について基準に該当する専任の技術者を置くことが必要です。技術者は同一営業所であれば、1人で複数の業種について兼務することもできます。また経営業務管理責任者との兼務もできますが、営業所に常勤する必要があります。
基準については複数ありますが、多くは実務経験により満たすケース、国家資格等の技術者資格により満たすケースが多く見受けられます。実務経験については受けようとする1業種に関して10年以上実務経験を必要とし(実務経験により2業種以上の専任技術者になる場合はご確認ください)。技術者資格による場合については栃木県で発行しています建設業許可の手引き等によりご確認ください。
私の経験からしますと、実務経験と技術者資格でとる割合は半々ですが、より多くの業種に対応できる技術者資格をお勧めいたします。
また、特定建設業の許可を受ける場合は一般建設業に比べ要件が厳しくなっておりますので注意が必要です。
(3)請負契約の誠実性
請負契約の誠実性ということで欠格要件が定められております。すべては記載いたしませんが、成年披後見人若しくは保佐人又は破産者で復権を得ないもの。不正の手段により建設業の許可を受けたこと等の理由により許可が取り消され、その取り消しの日から5年を経過しないもの。営業停止中や営業禁止期間中等。
暴力団の構成員である者。
また次に掲げる者で、その刑の執行を終わり、又は刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
・禁錮以上の刑に処せられた者
・建設業法の規定違反により罰金の刑に処せられた者
・建築基準法、宅地造成等規制法、都市計画法、景観法、労働基準法、職業安定法及び労働者派遣法のうち建設業法施行令第3条の2に定める規定に違反したことのより罰金の刑に処せられた者
・暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反したことにより罰金の刑に処せられた者
・傷害罪、現場助勢罪、暴行罪、凶器準備集合罪、脅迫罪、背任罪を犯したことにより罰金の刑に処せられた者
(欠格要件の代表的なもののみ記載いたしました、詳しくは確認ください)
その他、許可申請書及び添付書類中の重要な事項について虚偽の記載があり、又は重要な事実の記載が欠けているときは許可が受けられません。
(4)財産的基礎
一般建設業を受ける場合は次のいずれかに該当すること
・自己資本の額が500万円以上であること
・500万円以上の資金調達する能力を有すること
・許可申請直前の過去5年間許可を受けて、継続して建設業を営業した実績を有すること
実務としては決算書により自己資本が500万円以上ない場合は、取引銀行の融資証明書や銀行の残高証明書により証明することになります。
4、建設業者の義務
上記の要件を確認し、建設業許可申請をいたしますと、栃木県では約1か月後に申請が許可されます。建設業者にとってみれば許可を取得し大満足の場面ですが、許可を取得しただけでは許可業者としての役目は終わりません。
当然のごとく建設業法に定められた届け出事項が発生した場合は、適切な書類の提出が必要になります。
主だったところでは、@役員変更した場合A資本金に変更があった場合B商号、名称を変更した場合C営業所の名称、所在地、営業業種、営業所の代表者を変更した場合D営業所の新設E経営管理責任者の変更F専任技術者の変更G毎事業年度を経過したときH使用人数、令3条の使用人一覧表、定款、国家資格者等一覧表に変更があったとき、などがあります。
(提出期限については割愛いたします)
特に毎事業年度を経過したときの提出をされていない事業者もみうけられます。また経営管理責任者、専任技術者の変更には許可要件にもかかわってきますので、注意が必要です。以上は建設業許可の概要になります。
5、最後に
我々士業はそれぞれ専門分野がございますので、今後も専門分野をいかし協力していく必要があると考えております。何かの機会があればご指導いただければ幸いです。今回は貴重な紙面をありがとうございました。
栃木県建設業許可申請の手引き参照
安野光宣
行政書士安野法務事務所
宇都宮市江曽島1-5-16
電話028−645−4780
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